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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


278)知られざる闇ドラフトの世界(1)

大阪のカードショップGOTCHA!が、「今後、ベトナム国籍の方からの買取を全商品お断りさせて頂きます。当店の総合的な判断となりますため、詳細な理由については一切お答え致しかねます。」と発表した。

近年、高騰を続けるトレーディングカードは、その投機性の強まりに合わせて様々な問題が起きている。たとえば、オリジナルとの差異がない偽物(パーフェクトコピー)が出回ったり、開封したものをもう一度シュリンクして新品として転売する、といったことだ。これらは当然犯罪だし、その投機性がもたらした結果の一つだろう。

おそらくであるが、GOTCHA!は、そうした被害にあい、その加害者こそが「ベトナム人」という人種であると判断したのだ。基礎的な人権意識すら持ち合わせないのは驚きだが、日本人は単なる被害者なのだろうか。ベトナム人といった海外国籍こそが加害者なのだろうか。

ここからは、ぼくが子供の頃、小学5年から中学3年までの5年間に渡って経験したカードゲームの話をしたい。カードゲームの投機性は今に始まったことではないこと、そして(日本人)による犯罪行為が決して珍しいものではないことを。


1996年、小学5年生の頃だ。北町のみなと模型で地球儀が描かれた変なカードを見つけた。それがマジック・ザ・ギャザリング(MtG)の「クロニクル(日本語版)」(1996)だ。1パック購入してみると、中からはギトギトしていてグロテスクな絵柄のカードが出てきた。その本格的な絵に、ぼくの心はガッチリと掴まれた。MtGのカードを買うようになったのはこの頃からだ。

コレクター気質だったぼくは、Oくんを仲間に誘って笠市のブック宮丸本店や元町のジョージンに行って、コツコツとMtGを買い集めていった。そして1998年、中学1年になった頃、ブック宮丸本店横にフューチャービー(FB)というトレーディングカード専門店が開店するという情報を手にした。ハドソンが大本でブック宮丸がフランチャイズ契約したようだ。

FB開店当日、開店前にOくんと行くと、そこにはとんでもない数の人が、なによりも大人たちが並んでいた。子どもは僕たちくらいである。先頭の人は、ブルーシートを敷いて昨日から並んでいたという。この時初めてMtGが子供用のおもちゃじゃないことを知り衝撃を受けた。ちなみに開店後はというと、希望するカードパックを記入する用紙が配布され、一人10部まで半額で購入できた。ぼくは子供かつお金がなかったので「ストロングホールド」を2部だけ買った。

FBでの衝撃はもう一つある。壁一面に掲げられたレアカードと各カードに付された値段シールだ。たとえば、ぼくも持っている「真鍮の都」というカードは2000円以上の値がついていた。それまでのぼくは、カード単体に値段がつくなんて考えてもいなかった。それも、同じレアカードに分類されているにも拘わらず、値段が千差万別ということに。

さて、FBは2階建てになっていて、1階部が店舗、2階部がデュエルスペース(多目的スペース)になっている。2階に入るには、1年間有効の会員証を購入しなければならない。ぼくも自然な流れで会員証を購入し2階で遊ぶようになった。後に非合法な闇会員証がまん延することになるが、後半で述べる。

そんな矢先、洗礼を受ける。家でカードを眺めていると、先述の「真鍮の都」やその他のカードが無くなっていることに気がついた。Oくんのカードに混ざったのかと思って確認させてもらったが無かった。FBに忘れたのかと思って、探しにいったところ、顔なじみになった人に「盗まれたんじゃない?」といわれた。この時初めてカードは盗まれるものだということを思い知る。それも大人の手によって、だ。

そんな波乱に満ちたFBとの係わりは中学3年まで続くことになる。

つづく

2023-08-18