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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


197)オレは加速主義の夢を見ない

動画で初めて宮台真司が喋っているのを見た。宮台は、加速主義をもって、資本主義を推し進めることで資本主義を崩壊させて、世界を作り直すのがよいという。こんなことよく言えるな、と驚愕した。宮台は、宮台のいう「クズ」、つまり他者に絶望しているのだろう。なお、加速主義周辺の思想をまとめて暗黒啓蒙とも言うが、ぼくのプロフィールに書いてある「Anti-dark enlightenment」の接頭辞Anti-を抜いた部分がそれだ。

加速主義について簡単に説明したいが、思想としての強度が全くないので、人によって説明が異なるかも知れない。加速主義とは、資本主義を極限まで推し進め、そこにテクノロジーを加えることでよりよい世界になる、という具体性に乏しい思想である。市場と個人両方の自由を主張するリバタリアニズムの一つだろう。加速主義をもう少し細かく分類すると、大きく右派と左派に大別される。

右派加速主義は、シンギュラリティといった技術革新を使って、民主主義の欺瞞を暴き、近代国家を解体し権力を開放し、その権力を企業がもつ、というものだ。そして、そんな右派加速主義に対抗する形で生まれたのが左派加速主義で、資本主義を推し進めるのは同じであるが、こちらはテクノロジーで資本主義をコントロール可能な形にする、というものだ。

では、宮台は加速主義の何について話しているかというと。右派左派関係なく加速主義で資本主義が崩壊した後の世界について話している。テクノロジーに身をまかせた人々と、そこに属さない抵抗勢力としての既得権益のない状態から生み出された小さなコミュニティの形成を渇望する。さしずめ知識人とテクノロジーによる共同体といった感じだろうか。

だが、資本主義の加速の渦中に現れたのが何かといえば、シンギュラリティといった技術革新ではなく、アルカイダやイスラミック・ステート、日本でいえばオウム真理教といったテロによって近代国家を破壊する連中である。これを忘れてはいけない。そして、そもそも右派左派どちらの加速主義にも共通する重要な事柄の技術革新だが、それがなんなのか誰も分からないし知らない。

何が言いたかったのかというと、資本主義が抱える問題、つまり搾取や格差を放置して何が加速主義云々だよ、そんなのおかしいだろ、ということが言いたかったのだ。そしてまた、バカの多さに絶望しかけている自分もいる。いつ宮台みたいな考えになってしまうか分からない。

2022-01-12