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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。

学習フーガについて

クラシックの作曲の勉強をしていると、「学習フーガ」という言葉を目にすることがあると思います。しかし、学習フーガに関する情報は、和声や対位法と比較すると少なく、その全体像は掴みづらいと思います。(2017年現在、学習フーガについてのページは増えています。

このページでは、次の三つに絞って学習フーガを解説します。まず、フーガと学習フーガとは何かについて説明します。次に、学習フーガの実際の作例を紹介します。最後に、フーガについて書かれた書籍を紹介します。

フーガと学習フーガ

フーガとは

フーガ(伊:Fuga 仏:Fugue 日:遁走曲)とは、対位法的書法での模倣を主体とした書式のことです。その最大の特徴は、主題(主唱)が複数の声部に渡って順次登場するところでしょう。なお、フーガは14世紀といった古い時代では、カノンのような模倣を含んだ楽曲を指していました。その後、ファンタジアやリチェルカーレといった模倣を含む対位法的作品も、フーガという書式に収斂されていきます。それでは、フーガの構造を見てみましょう。

一般的に、フーガは次の三つで構成されています。まず、主題が提示される「提示部」です。次に、提示部と提示部をつなぐ「嬉遊部」です。そして最後に、主題が終わる前に次の主題が演奏される「追迫部(ストレッタ)」です。これらをフーガの楽曲として構成すると次のようなものになるでしょう。なお、実際のフーガでは提示部と嬉遊部のみで構成しているものも数多くあります。例えば、インヴェンションの第1番もフーガと見ることができます。

【フーガの構成例】

[ 提示部(主調) - 嬉遊部(転調) - 提示部(下属調や平行調など) - 嬉遊部(転調) - 追迫部(主調) ]

さて、フーガと聞くと、平均律クラヴィーアや、オルガンの小フーガなど、バッハの楽曲が思い浮かぶのではないでしょうか。バッハのフーガは、フーガという書式として一つの頂点に達していると言えます。その後、ハイドンやベートーヴェン、フランク、そしてバルトークなど、様々な作曲家たちがフーガを書いています。これらのフーガは単純だったり、ソナタ形式の中に組み込まれていたり、無調だったり、と自由に作られています。このようにフーガは厳格なものではなく、適宜に調節できる楽曲と言えるでしょう。

学習フーガとは

学習フーガ(仏:La fugue d'école)は、パリ音楽院における書法(和声・対位法・フーガ)の一つとして、19世紀に導入されたものです。その名の通り、フーガを学習するための決めたられた型となっています。それは、三つの提示部と、二つの嬉遊部、そして追迫部で構成されています。また、転調先や主題の現れる順序も概ね決まっているのも特徴でしょう。

東京芸術大学作曲科の受験二日目には「対位法楽曲:300分 つぎの主題によって、2声部以上の対位法的楽曲を作れ。」という、実質、学習フーガを書く問題がありました。しかし、2013年度でこの問題はなくなり、対位法の課題とコラール課題へと変更されました。理由は、学習フーガは対位法を良く知らなくても、和声法で書けてしまうためです。特に、島岡譲(1984)『フーガの実習』国立音楽大学では、機能和声を重視した内容となっています。次で紹介する学習フーガの作例も、機能和声を重視しており、バス課題の実施に近いものがあると感じました。

最近では、YouTubeに代表される動画投稿サイトで「学習フーガ」と検索すると好例が沢山見つかります。是非、探して見てください。

学習フーガの作例

グノー主題による学習フーガの作例を紹介します。この主題は、1882年のローマ大賞(le Grand Prix de Rome)で出題されたものです。ドビュッシーもこの主題でフーガを書いています。

グノーの主題

次の学習フーガの作例は、島岡譲『フーガの実習』を片手に書いたものです。しっかりと学習した人と比較するとかなり拙いものです。対位法よりも、和声法を優先して書いてしまったので、全体的に旋律が続いたゴツゴツした響きになっています。もっと大胆に休符を取り入れて、どこが提示部かをはっきりとさせた方が良いと感じました。学習フーガは一曲だけでも書いてみると良い経験になると思います。

学習フーガの作例1 学習フーガの作例2 学習フーガの作例3 学習フーガの作例4 学習フーガの作例5

フーガのテキスト(2017年版)

フーガのテキストには様々なものが存在しています。しかし、その中には絶版も多く含まれています。2017年の日本で入手が容易なものとして山口博史(2016)『フーガ書法』、島岡譲(1984)『フーガの実習』が挙げられます。ここではフーガに関する書籍を、重版と絶版に分けてまとめておきます。なお、洋書は絶版なのか重版なのかよくわかりません。また、古い洋書はインターネット・アーカイブのように、パブリックフリーになったものを収集・公開するサイトで閲覧することができます。

重版のもの

・イェッペセン(2013)『対位法 パレストリーナ様式の歴史と実習』柴田南雄・皆川達夫訳、音楽之友社

・柏木俊夫(2013)『改定増補 二声対位法 基礎からフーガまで 付 装飾法と通奏低音』東京コレギウム

・ケルビーニ(2013)『対位法とフーガ講座』小鍛冶邦隆訳、アルテスパブリッシング

・島岡譲(1984)『フーガの実習』国立音楽大学

・野田暉行(2003)『Fugue 新版組・増補版』E World Japan publishing

・野田暉行(2010)『Fugue 付録』E World Japan

・長谷川良夫(1955)『対位法』音楽之友社

・ビッチ、ボンフィス(1986)『フーガ』池内友次郎訳、文庫クセジュ

・モラール(2013)『ライプツィヒへの旅 バッハ=フーガの探求』余田安広訳、春秋社

・山口博史(2016)『フーガ書法』音楽之友社

絶版のもの

・池内友次郎(1977)『学習追走曲』音楽之友社

・デュプレ, マルセル(1957)『対位法とフューグ』池内友次郎訳、東京教育出版

・島岡譲(1986)『音楽の理論と実習 III』音楽之友社

・島岡譲(1986)『音楽の理論と実習 別巻III 上』音楽之友社

・島岡譲(1986)『音楽の理論と実習 別巻III 下』音楽之友社

・福本正(1966)『フーガの研究』音楽之友社

・諸井三郎(1961)『楽式の研究II フーガ』音楽之友社

・ヤダスゾーン(1952)『カノンとフーガ(典則曲および遁走曲教程)』戸田邦雄訳、音楽之友社

洋書のもの

・Bitsch, et Bonfiles. La Fugue. Parism, Combre, 1993.

・Dubois, Theodor. Traite de Contrepoint et de Fugue. Paris, Heugel, 1901.

・Dupre, Marcel. Cours Complete de Fugue. Paris, Leduc, 1938.

・Gedalge, Andre. Traite de la Fugue. Pairs, Enoch, 1904.

・Mann, Alfred. The Study of Fugue. New York, W.W.Norton.

・Merlet, Michel. Fiche Analytique: pour une Description Rationnelle de la Fugue. Paris, Leduc.

・Richter, Ernst Friedrich. A Treatise on Canon and Fugue: Including the Study of Imitation. Arthur W.Foote(ed.), Boston, O.Ditson, 1888.

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