録音に必要な機材
録音するための様々な機材と簡単な使い方を概観します。明瞭な音を録るためには、どのような機材が必要なのかを網羅的に記述しました。また、動画の作成・配信を目的としているので、パソコンやスマートフォンを既に所有していることを前提としています。
詳しい使い方に関しては、別途記事にします。
最初におすすめを書いておきます。おすすめは、ハンディ・レコーダーです。単体でも高品質な録音が可能な上、外部マイク入力を備えているものやオーディオ・インターフェース機能を持った機種もあり、汎用性にも優れています。このような機能が充実しているのは、1〜2万円台のものになります。可搬性に優れているので、後々でも腐りづらいと思います。
録音に係る様々な機材
前述したよう、ここであげる機材は、すべてが必要という訳ではありません。自身の活動内容に合わせて、必要なものを揃えます。最低限必要なものは次の三つです。まず、音を拾うマイク。ついで、明瞭な音に調整するミキサー。そして、その音を保存する録音装置です。冒頭でおすすめした、ハンディ・レコーダーには、この三つの要素を兼ねたものがあります。
録音装置は、ミキサー本体やSDカードに保存できることがあります。できない場合は、別途パソコンやレコーダーが必要になります。よほど本格的あるいは安価な機器じゃない限り、SDカードに保存できると思います。
マイクロホン
マイクに関しては「音楽制作・作曲に必要なもの(デジタル編):マイクロフォン」もご覧ください。
マイクロホン(以下、マイク)は、録音を行う上で必ず必要になります。マイクは空気振動(音)を電気信号に変換してくれる機器です。このマイク後述するミキサーやオーディオ・インターフェースに接続して使います。
マイクには、大きく二つの構造と複数の特性があります。二つの構造とは、音を電気信号に変換する仕組みの違いです。そして、複数の特性とは、マイクの対して、どの方向の音を集音するかを規定する指向性です。順に見ていきましょう。
2種類の構造のマイク
マイクの構造は、ダイナミック・マイクとコンデンサ・マイクの二つに大別できます。コンデンサ・マイクの注意点として、ファンタム電源という電源供給が必要になります。つまり、コンデンサ・マイクを使用する場合、接続機器がファンタム電源に対応している必要があります。対応していないと、壊れる可能性があります。
それぞれのマイクの仕組みは、概ね次のようなものです(専門外です)。まず、ダイナミック・マイクは、空気振動(音)で振動板(ダイアフラム)を振動させ、コイルと反応させて電気信号に変換します。つぎに、コンデンサ・マイクは、空気振動を振動板で拾うまではダイナミックと同じですが、振動板で電圧を変化させます。その変化の値を電気信号に変換するものです。
構造の違いによる様々な影響
ダイナミック・マイクとコンデンサ・マイクの構造の違いは音や使用法、そして価格にも影響を与えます。まず前提として、コンデンサ・マイクの方が高感度(細かな音が録れる)できれいに録音できます。つまり、コンデンサ・マイクの方が高性能です。しかし、湿度や衝撃に弱く、また非常に高価というデメリットがあります。たとえば、ダイナミック・マイクの定番であるSHURE SM58は1万円前後で販売されています。一方、コンデンサ・マイクの定番であるNEUMANN U87Aiは、27万円もします。
この二つのマイクは、目的に応じて使い分ける、というよりも使用環境によって使い分けられるといってもよいかもしれません。極端な例として、象嵌といった手作業の手元の音を拾いたい場合は、コンデンサマイクが向いています。一方、湿度の変化幅が大きい作業やインタビューといった野外に持ち出しすものは、ダイナミック・マイクが向いています。
指向性は目的に準じて
指向性とは、マイクが音を拾う方向・範囲のことです。指向性は大きく三種類あります。それは、マイク正面の音を拾う単一指向性。全方向の音を拾う無指向性(全指向性)。マイクを挟んだ両方向の音を拾う双指向性、です。集音の範囲が広がるにつれ、雑音が増えていきます(これは必ずしもデメリットではありません)。
それぞれの指向性が使われる場面を見ていきましょう。
単一指向性は、声撮り、楽器の録音といった音の出どころが明確な場合に用いられます。特定の音源にピントをを合わせることで、その他の雑音は拾いません。テレビ収録で見かけるガンマイクと呼ばれる長いマイクも、とても狭い範囲の音を拾う単一指向性です。このように、単一指向性の中にも色々と種類があります。
無指向性(全指向性)は、会議やインタビュー、自然の環境音といった広範囲の音を録りたい時に用います。一般的にスマートフォンや家で量販店で売っているICレコーダーは、この無指向性になります。無指向性は、不要な音も拾ってしまう反面、しっかりと音を拾うことができます。
双指向性は、ラジオの収録のような対面の会話や二重奏の録音に用いられます。このように、双指向性はかなり限定的な使われ方をします。重要度は高くありません。単一指向性のマイクを二つ使っても同じことが出来るためです。

所有するマイクを紹介します。リンク先と価格はsoundhouseに準拠してあります(2021-04-16)。おすすめは、定番のSM58ですが、1000円強と安価なCM5Sもおすすめです。これらマイクの音の違いを別ページで紹介しています(未実装)。
オーディオ・インターフェース
まず、注意点として、ループバック機能がある機器を購入してください。もし、ループバック機能がない場合は、自分で配線をつなぐ必要があります。
マイクやスピーカーをパソコンやスマートフォンと接続するための機器です。単に出入力コネクタが付いているだけのものから、後述するミキサーと一体になったもので、様々なものがあります。概ね、1万円前後から購入できます。
ミキサー機能は、パソコンがあればソフトウェア側で同等のことが可能です。ミキサーを購入するよりも安上がりな場合が多いと思います。そのソフトウェアは、一般的にDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれています。
有名なソフトウェアとして、Protools、Cubase、Logicなどがあります。これらのソフトウェアの中には、オーディオ・インターフェースを新品で購入すると、機能制限版がバンドルされている場合があります。

図2の機器がオーディオ・インターフェースです。この機器とパソコンをUSBで接続します。フロントパネルには、マイク(楽器)とヘッドホンしか入出力がありません。背面にスピーカーやアンプに接続する端子があります。
冒頭にも書きましたが、ループバック機能がある機器を購入した方がらくです。ループバック機能とは、パソコン側で鳴っている音も入力できる機能です。通常は、パソコン側で音楽等を再生をすると、オーディオ・インターフェースを介してスピーカーかヘッドホンから出力されます。しかし、ループバック機能がある場合は、同じく出力されますが、同時に再びパソコン側に音を再入力します。言葉での説明が難しいですが、この機能がないと、パソコンで鳴っている音を録音したり配信することはできません。
もし、ループバックがなかった場合も慌てなくても大丈夫です。オーディオ・インターフェースの出力から入力に配線を繋くと、ループバックと同等のことができます。
ミキサー
ミキサーのゲインやレベルは「0」の状態を確認してから電源を入れ/切ります。とても重要なことなので、先に書きました。
ミキサーとは、入力された音を調整して出力する装置のことです。つまり、音の出入力装置です。スイッチやツマミが沢山あり、複雑に見えますが、操作は単純です。
下掲した写真を例に見ていきましょう(図2)。ツマミやフェーダーが沢山ありますが、チャンネルが並列しているだけです。チャンネルとは、一つの音の出入力を決定するまとまりのことです。左端のチャンネルに着目して、主となる四つの調整箇所を機能別に4色で囲みました。また、右下に白で囲んだ箇所があります。

青で囲んだツマミは、入力の音量(感度)を調整するゲインです。マイクからの入力される音量の大きさを決定します。
緑で囲んだツマミは、周波数帯域の増幅・減退するイコライザー(EQ)です。空調音や車の走行音といったノイズを軽減させたり、特定の音を増大できます。明瞭な音声を作ることが目的ですから、EQでは特定の帯域を減退させることが殆どです。特に低域から中域は大胆にカットすることが多々あります。
黄で囲んだのツマミは、音の定位(位置)を左右にふるパンです。マイクは基本的にモノラルですから、中央から聞こえます。しかし、マイクからの音声を片方のスピーカーからだけ出したい、といった時に使えます。
赤で囲んだフェーダーは、出力の音量を調整するレベルです。入力された音をここで増幅します。入力のゲインと密接な関係があり、すり合わせながら、ちょうどよい所を探します。なお、小型のミキサーだと、レベルがフェーダーではなく、ツマミになっている場合があります。
最後に、右端にある白で囲んだ赤色のフェーダーは、チャンネル全体のレベルを調整するものです。マスターフェーダーと呼びます。ここが下がっていた場合、スピーカーから音は出力されません。また、ヘッドホンはマスターと別にレベルのツマミがあります。
ミキサーによっては、ON/OFFスイッチやエフェクトなど、様々な機能がありますが、基本的は上述の通りです。それぞれの機能を列挙すると以下のようになります。
- ゲインで入力の音量を規定し
- EQで不要な帯域を減退し
- レベルで出力の音量を規定する
- そして、マスターで全体の音量を決定する
筆者が所有するミキサーには、オーディオ・インターフェース の機能も付属しているものがあります。オーディオ・インターフェイス機能の有無で、価格が大きく変わるものではありません。オーディオ・インターフェース機能モデルがある場合は、そちらを購入した方が汎用性が高いと思います。

ミキサーにレコーダー機能がある場合は、そのまま録音できます。ない場合は、別途レコーダーやパソコンと接続して録音する必要があります。近年のミキサーは、安価でもオーディオ・インターフェース機能が付いている場合があります。
ハンディ・レコーダー
冒頭でおすすめしたハンディ・レコーダーです。可搬性に優れているだけではなく、高音質で録音することができます。また、オーディオ・インターフェース機能や外部マイク入力が備え付けられたものは、汎用性も高いです。TASCAM DR-40Xは、どちらも備えています(図5)。

購入する時の注意点として、必ず楽器用と書かれた製品を選択してください。家電量販店で売っているようなレコーダーは会議用です。会議用は無指向性なので、不要な音を多く拾ってしまいます。
購入するメーカーの目安として、ZOOMやTASCAMの製品が性能がよく、また安価です。
ヘッドホン
ヘッドホンは、録音中あるいは録音した音を確認するために用います。こだわらなければ、どんなヘッドホンを使っても問題ありません。しかし、音をよく調整したいのであれば、モニターヘッドホンと呼ばれる、フラットな音で聞けるものがよいと思います。
フラットな音とは、特定の帯域が強調されていないものを指します。一般的なヘッドホンは、たとえば低音が強調されています。しかし、それがダメというわけではないので、好きなものを使っても大丈夫です。

定番は、SONYのMDR-CD900STです。日本のスタジオで標準的に使われています。しかし、これにこだわる必要はありません。使いやすいと感じたヘッドホンを使ってもよいです。
注意点として、フォン端子の大きさの違いがあります。標準とミニの2種類のサイズがありますので、適宜、変換コネクタを咬ませて調節します(図7)。変換コネクタは百均にも売っています。

ケーブル類
以上に加えて、各種ケーブルや小物が必要になります。ケーブルの注意点として、ピュア・オーディオ用の高価なケーブルは、基本的に使いません。総じて端子の取っ手が大きいため、隣接する端子と干渉してピンを挿入できない場合が多々あります。また、装飾されてゴツいため、機材側のメス端子が壊れる可能性もあります。
XLRケーブル(キャノン)
XLRケーブルは、録音において最も重要なケーブルの一つです。マイクからXLRケーブルてミキサーやハンディ・レコーダーに接続します。XLRケーブルは、ノイズが乗りにくく(正位相のノイズを逆位相で相殺する)、またコンデンサマイクに必要なファンタム電源にも対応しているため、よく用いられます。

XLRケーブルは、長いものでもノイズが乗りづらいので、必要な長さのケーブルを購入します。とはいっても、複数本のケーブルの持ち運びが前提の場合、長いケーブルはとても重くなります。

RCAケーブル
AV機器で一般的に用いられ、コンポジットと呼ばれています。赤と白の端子ですので、見たことがあると思います。CDプレイヤーといった、他の音響機器からの出力でRCAケーブルが用いられます。たとえば、音声と別に音楽を流したい場合、ミキサーのRCA入力に接続します。ミキサーによってはRCAの入力がないものもあると思います。
USBケーブル
USBケーブルは、オーディオ・インターフェイスとパソコンを接続します。また、給電にも用いられます。USBは普及しているケーブルですが、規格が乱立しており、規格が違うと給電が出来なかったりデータ転送ができなかったりします
USBには、二つの規格があります。一つはA、B、C、mini、といった形状の規格です。もう一つは、1.0、2.0、3.1 gen2といった、転送速度の規格です。この二つの規格が目的にマッチしないと、機能しません。どの規格が必要かマニュアルで確認します。
小物・その他
いざ録音してみると、さまざまな小物が必要になってきます。たとえば、前述した変換コネクタやマイクスタンド、風の音を軽減するウィンドー・ジャマーや乾電池などです。テスト録音をすることで、何が必要か見えてくると思います。

更新情報
- 公開日:2021-02-27
- 更新日:2021-04-16