作曲・浄書・指導・音響

金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


155)29年越しのモルガーネ

1992年に公開されたアニメ映画『ムーミン谷の彗星』をやっと見た。29年越し(!)のことである。子供の頃から見たかった作品の一つだが、DVDを買うタイミングを逃してしまい、見る機会がなかなか訪れなかった。『ムーミン谷の彗星』は、ムーミンと聞いて一般的に想起されるような、ほのぼのとした印象とは一線を画する作品である。

しかし、まずはなんと言っても2曲ある主題歌がよい。白鳥英美子の玲瓏たる歌声の凄さ。これだけでも感動してしまった。エンディングでは、スナフキンのハーモニカ独奏にクロスフェードするのも憎い。また、劇場版なので音楽がステレオ音声で聞けるのはうれしい(90年代初頭のアニメは、まだまだモノラル音声が主流だった。だからこそ、ステレオ音声で聞けるサウンドトラックには価値があったのだろう)。

さて、あらすじは次のようなものだ。ある日、平和なムーミン谷に黒い雲が現れ、黒い雨が降った。これを見た偏屈な哲学者ジャコウネズミは、この世が滅ぶといいだす。ムーミンは真相を確かるため、ミイとスニフの三人でおさびし山にある天文台に向かう。道中、孤独を愛する旅人のスナフキンと出会い共に旅を続ける。天文台にたどり着いたムーミンたちが望遠鏡で見たのは大きな彗星だった。なんとこの彗星が地球に衝突するというのだ。ムーミン谷への帰路、危機に瀕していたスノーク兄妹を助ける。だが、行く手を阻むかのように、干上がった海溝や難破船、そして怪物が立ちふさがる。その後、切手収集家のヘムレンさんと出会い、様々な障害を知恵と勇気を振り絞りながら乗り越えていく。無事、ムーミン谷に着くも、谷の住人は避難の最中であった。ムーミンパパたちと合流したムーミンは、彗星の落下に備えて海岸の洞窟に避難する。そして夜、いよいよ彗星が近づいてきた。だが彗星は地球をかすめ、再び宇宙へと独り飛び立っていく。薄明の頃、ムーミンはひとり目を覚ます。洞窟の外にでるとそこにはスナフキンがいた。スナフキンは干上がった海の水平線を見つめつぶやく。海が帰ってきたんだよ、と。

『ムーミン谷の彗星』は、ムーミンとムーミン谷の仲間たちとの邂逅の物語であるが、全体に通底するのは「自然への畏怖」である。自然が持つ美しさ、力強さ、そして何よりも恐怖を見事に描いている。またよくある、一つの危機がみなの絆を深める、という安っぽいものもない。ムーミンたちは、個々が自立し他者を尊重している。つまり、この様な危機的状況においても、自分らしく気ままに生きているのだ。

なお、彗星の恐怖を描いた他の作品として、岩倉政治の『空気がなくなる日』(1947)、それを下敷きにした(と思われる)藤子・F・不二雄の「ハリーのしっぽ」(『ドラえもん』33巻、1985)などがある。『ムーミン谷の彗星』の原作は、1946年に出版されている。このネタは海外文学には沢山あるだろうが、あいにく当作しか知らない。

ちなみに、平成時代に放送されたムーミンには、『楽しいムーミン一家』(1990-91)とその第二期にあたる『楽しいムーミン一家 冒険日記』(1991-92)がある。この「冒険日記」は、監督や制作会社が変わり、かなり出来が悪い。「冒険日記」終了後に制作された当作もクオリティが心配であったが、とてもよく作られていた。劇場版の監督は、第一期の斎藤博が務めた。キャラクターデザインは、テレビ版を務めた名倉靖博ではないものの、山﨑登志樹という優秀な人が手掛けている。音楽はもちろん白鳥澄夫である。

タイトルの「モルガーネ」は、主題歌の《しあわせのモルガーネ》から拝借した。知恵袋によれば、モルガーネは妖精とのことだが、調べた感じちょっと違うようだ。モルガーネに関するいくつかのリンクを示しておく。

2021-02-20