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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


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77)うだつは上げられたか

夏になったので、また卯辰山をウォーキングしている(「猛暑とウォーキング」18/08/03)。ただし、以前と違うことがある。 それは、復路は卯辰山に戻らず、東山(卯辰山山麓寺院群)を通ることである。金沢は戦火を免れたので、町家や複雑に入り組んだ小径など、古い町並みが残っている地域が多い。観光地として名高い東山はその最たるものであろう。そんな東山を散策していると、いくつか気がつくことがある。たとえば、小径の中に少しだけ開けた空間が点在していることだ。金沢では、この開けた空間のことを「広見(ひろみ)」と呼んでいる。もし金沢を散策していて、ちょっと開けた空間を見つけたら、そこが広見である蓋然性が極めて高いだろう。

広見は江戸時代に整備された広場だそうだ。その目的は、伏兵を配置したり、火事の時に火消しが集結する、また辻説法が行われる、など多目的であったと言われている(守り、という意識が強いように感じる)。詳細はレファレンス事例詳細「金沢の広見について知りたい。」を参照して欲しい。では、現在の広見はどうかといえば、ゴミの集積場や町内の掲示板が設置されていたり、運送業者が一時的に駐車したりする空間となっている。また、石引広見のように広い空間をもつ広見ではイベントが開催されることもある。つまり、広見は現代においても多目的な空間として機能しているのである。ちなみに、東山には消化器が設置してある広見があり、その歴史を知っていると少し嬉しくなるような、粋な配置である。

東山には広見だけではなく、多くの町家が並んでいる(金澤町家という呼称もあるが、妥当性があるのか分からない)。その町屋をよく観察してみると、殆どに「卯建(うだつ)」が付けられていることが分かる。卯建とは、軒と屋根の間につけられた壁のある小柱のことである。卯建の目的は時代によって異なるようで、元来は延焼を防ぐ防火の役割であったが、やがて財力を誇示するための装飾へと変容したとのことだ(だとすれば、防火機能はあまりなかったのかも知れない)。金沢は見栄っ張りだから、きっと後者の見栄えで卯建をつけたのだろう、と率直に思ったが、広見が火除けとしての機能を持っていたことを思えば、やはり防火の意識があったのだろう。

ところで、東山の一本裏の通りで「Gold Ice Bar」と書かれた暖簾を見つけた。なんだか嫌な予感がしながらもインターネットで調べてみると、想像通りアイスのバーに金箔を巻き付けたものであった。こういったものはバカっぽくて買う気はしないが、旅行のネタや写真を撮ってSNSにアップロードするものとしては中々面白いものなのだろう。他にも金箔ソフトクリーム、金箔お吸い物、金箔ぜんざい、金箔コーヒー、金箔……などなど、東山のうだつは立派に上がっているようである。

2019/07/08


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