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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


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71)アルケオロジーから00年代へ

子供の頃の夢は考古学者であった(自分でも意外だと思う)。90年代初頭、テレビでは古代文明を主題にした番組が頻繁に放送されていた。たとえば、『NHKスペシャル』や『日立 世界・ふしぎ発見』などであり、小学生の僕はこれらを楽しみに見ていた。この古代文明ブーム(といえる程のものだったかは分からないが)を牽引していた一人に、考古学者の吉村作治があげられると思う。

僕と考古学との出会いは、親が買ってきたやはり吉村作治の本であった(タイトルは忘れた)。内容は難解なものではなく、X線を使って遺跡の構造を分析したり、衛星写真から新たな遺跡を発見した、という当時最新の技術を活用した調査報告が中心であった。僕はそうした古代遺跡や遺物の謎とその解明の過程に胸を膨らませ、将来は自分も考古学の調査に携わりたいと強く思ったものだ。だが、そんな純粋な子供の前に彗星の如く現れたのが、これまた親が買ってきたハンコック『神々の指紋』(1996)である。

『神々の指紋』は、超古代文明は存在した、とするノンフィクションである。たとえば、ギザの大ピラミッドは1万2千年以上前に建造されたものであり、それらは天体と密接に関係(ピラミッドを鳥瞰すると、その配置型がオリオン座の三連星と一致する)している、という今して思えば荒唐無稽なものである。この悪夢のような書である『神々の指紋』の登場は、それまで吉村作治が牽引してきたであろう古代文明ブームから超古代文明ブームへと大きな転換を引き起こした。それは、ある程度学術的であった(と思われる)『日立 世界・ふしぎ発見』でも『神々の指紋』を取り上げる程で、その大胆な内容は世界的なベストセラーとなったものである。(当時、『神々の指紋』を読んで面白かったのは確かである。強いていえば、諸星大二郎『妖怪ハンター』(稗田礼二郎シリーズ)を読んだ時に近い感覚とでもいえばよいのだろうか。)

今にして思えば、90年代中葉は、超常現象を取り扱った作品が多く発表された時代であった。テレビ番組だけでも、『特命リサーチ200X』(1996-2002)や『MMR未確認飛行物体』(1996)、そして『X-ファイル』(1993-2003)などが想起される。そして、これら超古代文明や超常現象といったものは、90年代末葉になると、1999年に人類の滅亡が予見された「ノストラダムスの大予言」という、一大ムーブメントに収斂されていった。当時の僕は、これらの話をかなり信じていたし、また恐怖していたと思う。

そして、僕が中学生の頃には、終末の1999年を超え、2000年代へと突入した。つまり、「ノストラダムスの大予言」は見事に外れ、それに伴ってブームは急速に収束したのである。さて、00年代は情報化社会の幕開けでもある。その象徴的事件である「2000年問題」と共に始まった情報化社会の前では、超古代文明も超常現象も古き良き一過性の流行として消費されてしまった。そして、僕の考古学者になりたい、という強い気持ちも自然と消えていったのである。

僕がスピリチュアルやオカルティックなものに懐疑的だったり嫌悪感を抱いているのは、これまで述べてきた時代の中でその影響力を体感してきたからだろう。その一方で、このようなものとの付き合い方や愉しみ方もある程度理解しているつもりである。この観点に立脚するならば、考古学者になりたい、という忘れてしまった夢に、一定の成果があったといってもよいだろう。

2019/05/31


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