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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


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59)ggrksの終焉

ggrks【ググれカス】とは、ネットスラングで「人に質問する前にGoogle検索で調べろ」という意味です。00年台後半に多様されていましたが、今では見かけなくなった語の一つです。そんなggrksがネットで話題になっているのを目にしました。正確には、今のインターネット検索は当時と違って有益な情報が少ないためggrksと言いづらくなったといいます。その背景は、まとめサイトと呼ばれるアフィリエイトサイトが台頭したことで、誰も有益な情報をネットに書かなくなったというものです(この話題は定期的にあるようです)。

なるほど、と思います。確かにまとめサイトはその特性上SEO(検索エンジン最適化)に力を入れており、検索結果上位に表示されます。それは情報を求める人にとって、ノイズでしかないでしょう。しかし、だからといって検索が機能しない(=有益な情報が減った)かといえば、そうではないと思います。理由は二つあります。一つは、そもそもネットの情報だけで何かを理解することは容易でないのではないか。他方は、ネットの情報の総量は急速に増大しており、検索結果から有益/無益を表すのは困難ではないか、というものです。

まず、ネットの情報だけで何かを理解できるか否かは「理解」の射程に依存します。つまり理解可能な場合がある、ということです。例えば「対位法」という語の意味や概要を調べる程度であれば、Web上の辞典やWikipediaなどで十分に理解できるでしょう。その一方で「対位法」の理論と実践のように実務レベルの知識や技能を身につけるのは、ネット上だけでは完結するのは困難だと思います。しかし例外もあります。W3CといったITに関するものは、体系化された情報がまずサイトで公開される場合があります。ただし、検索結果から専門的なサイトにたどり着くには一定の知識や技術が要請されると思います。

次に、ネットの情報の総量が急速に増大しているということです。ネットに増加したのはまとめサイトの記事だけではありません。CiNii ArticleGoogle Scholarといった論文検索サイトのコンテンツは日々登録され、また若い研究者は大学のサーバーやGoogleSiteなどを利用して、積極的に情報を発信しています。しかし、これらのサイトにたどり着けるのは、能動的に調べることができる人でありggrksと書かれる人ではないでしょう。

こうなってくると、ggrksは俗的な新語やスラングかつ表面的な意味の理解を対象にした場合に限って機能すると考えるのが自然です。試しに「テクスト理論」と検索したところ、僕の環境ではまとめサイトは皆無で、研究室や論文がヒットします。一方で「VTuber」と検索すると過半数がまとめサイトでした。この結果から分かるのは、ggrksが機能していた/機能しなくなった、というのは前述の通り非常に射程の短い小さな場合の問題であるということです。

以上を踏まえてggrksが機能なくなった、という原点に立ち戻ると、二つの仮説が生まれます。それは、自身が真に要求する情報を把握していないのではないか、ググれ(検索すれ)ばなんでも理解できるという前提があるのではないのか、というものです。前者の場合はもはや理解は不可能な状態で、原理から学ぶ必要があります。後者は「調べる」と「検索する」が同義になっており、情報を取り扱う能力が著しく欠如している状態だと思われます。ggrksがこれらに依拠しているのであれば、ggrksはそもそも機能などしておらず、その使用者はインターネットという集合知を過信し、期待しずきているのでしょう。

2019/02/09


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