作曲・浄書・指導・音響

金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


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26)行動化

新しく知った言葉の一つに、「行動化(acting out)」というものがあります。主に心療内科における臨床で使われる用語です。

斎藤環『承認をめぐる病』(日本評論社、2013)によると、「行動化」とは、無意識の葛藤が論理的に言語化されることなく、暴力的な(一方的で他者を巻き込んだ)行動として意思表示(アピール)することです。例えば、会社で上司に叱られたことで腹を立て、帰宅する、無断欠勤する、自傷する、自殺を図る、といった意思表示が「行動化」といえます。

これで思い出したのが、僕が教育実習に行った時の体験です。実習では、担当教員が勝手に帰る(指導の放棄)、情報を伝えない、唐突な癇癪といったものが多くありました(指導は他の教員が行ってくれました)。もしかしたら、これが「行動化」だったのかもしれません。もちろん、僕は医師ではないので、それが本当に「行動化」か否かの判断は不可能です。

前掲書は、「承認」をテーマに17本の論文を編纂したものです。中でも興味深く読めたものを少しだけ紹介します。コンテンツ=コミュニケーションという前提のもと、キャラ消費とスクールカーストの発生について述べた「若者文化と思春期」。秋葉原無差別殺傷事件を、加藤の行動化から考察する「秋葉原事件――三年後の考察」。陰謀論や嘘をなぜ信じるのか、それは私たちが嘘を必要(聴きたい)としているからだと述べる「震災と「嘘つき」」。皮膚科と精神科の診断を対照させ、視覚を触覚的に活用するテクスチャー感覚(プレコックス感)について述べた「snap diagnosis事始め」。プラトンからフーコーに至るまでのミメーシスの解釈の変遷と、斎藤の身体論であるラメラスケイプについて論じた「ミメーシスと身体性」。これら以外の章も興味深いものですが、難易度にばらつきがあったり、内容が重複してる箇所があったします。しかし、斎藤の文体はセンテンスが短く、明晰な文章です。門外漢でも素直に読めると思います。

2018/04/30


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